【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~サケ・レバー・鶏ささみ・オイル編~
2022.10.26 作成

【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~サケ・レバー・鶏ささみ・オイル編~|連載「獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン」vol.12

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

DC one dish獣医師/ペット栄養管理士の岩切裕布です。犬や猫のドライフードにトッピングをする際、皆さんはどのような食材を選びますか。食材の種類や量によっては、全体の栄養バランスを乱してしまうこともあります。前回に続き、知っておきたい食材の知識、トッピングする際に気を付けることをお話します。

前回の記事:【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~煮干し・海藻・青魚編~vol.11

もくじ

    犬や猫のフードにトッピングをするメリットと注意点

    【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~サケ・レバー・鶏ささみ・オイル編~
    (New Africa/shutterstock)

    トッピングのメリット

    トッピングには、味を変えることで食欲を増し、食のバリエーションを増やすことで動物たちの生活の質を高めることができるといったメリットがあります。

    また、トッピングするものによっては、効率よく水分摂取ができたり、体に良い成分を摂取できたりするので、健康にもプラスに働くことがあります。

    トッピングをする前に知っておきたいこと

    日々の主食として与えるご飯は、総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものを与えることが基本です。そして、トッピングはおやつも含め1日に必要なカロリーの10%程度までにおさえましょう。

    もし、トッピングが10%を超えてしまっている場合は、量を減らすか、トッピング自体を総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものに変更すれば、割合に関係なく与えられます。

    しかし、一般的な上記のルールを守ったとしても、長期的に同じ食材をトッピングすることで栄養素の欠乏や過剰を示す可能性がある食材があります。注意が必要な食材を挙げてみましょう。

     

    サケ(鮭)

    サケ(鮭)
    (grey_and/shutterstock)

    サケはドライフードの原料にもよく使われ、犬や猫にも人気の食材のひとつです。しかし、サケにはビタミンDが大量に含まれています。

    ビタミンDは摂取上限が設定されている

    総合栄養食やAAFCOの基準には、ビタミンDの摂取上限が設定されています。鮭の摂りすぎは、ビタミンDの過剰症につながる可能性があるため注意しましょう。

    市販ドックフードでも、たんぱく質をサーモン単体で設計してあるフードはほとんどありません。

    他のたんぱく質も合わせて使用しているか、サーモンから油を抽出したミールの状態で配合されていることが多いです(ビタミンDは油に溶ける脂溶性ビタミンのため、油を除くことでビタミンDの量を減らすことができます)。

    ビタミンDはカルシウムやリンの代謝に関わっており、過不足なく摂取することが重要です。

    人のサプリメントでは、カルシウムと相乗効果を期待して添加してある製品が多く、油に溶ける性質からEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの油が含まれるサプリメントにも含まれている場合があるため、注意が必要です。

    人も動物も、ビタミンDの過剰摂取は、体にミネラルを沈着させ、高カルシウム血症、沈うつ、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。

    レバー(肝臓)

    レバー(肝臓)
    (Kritchai7752/shutterstock)

    レバーも犬や猫に人気の食材です。ビタミンAは眼や皮膚を健康に保つために必要な栄養素で、特に、鶏や豚のレバーに多く入っており、鮭と同様に、ビタミンAにも摂取上限があります。

    そのため、市販フードでもタンパク源をレバー単体で設計してあるフードは、見ることがまずありません。

    ビタミンAの過剰摂取による影響

    ビタミンAを過剰に摂取すると、食欲不振、体重減少、関節炎などの症状を引き起こします。

    飼い主さんがレバーを茹でてトッピングしたり、総合栄養食やAAFCOの基準に沿っていないレバーをメインにしたりする場合は、多く与えすぎないようにしましょう。

    鶏のささみ

    鶏のささみ
    (HelloRF Zcool/shutterstock)

    鶏のささみは、水分を除くとほぼタンパク質です。そのため、トッピングとして許容されるカロリーである1日の摂取カロリーの10%をすべて鶏ささみにしてしまうと、相対的に摂取するタンパク質の割合が大きくなってしまいます。

    タンパク質制限が必要な子は注意

    特に病気がなく健康な状態の場合は、鶏ささみの摂取が大きな問題になることはまずありません。しかし、腎臓病などのタンパク摂取の制限が必要な病気を持つ犬や猫に、鶏ささみを多く与えるのは控えましょう。

    血液検査上の腎臓の数値を上昇させ、尿毒症になり、食欲の低下や嘔吐、下痢などの引き起こす可能性があります。

    タンパク質の多いその他の食材

    タンパク質が多くある程度量を与える可能性のある食材としてはほかに、ジャーキー、卵白、ヒレ肉、むね肉などがあります。愛犬や愛猫が好きだからといってトッピングをタンパク質の多いものだけにするのは、避けましょう。

    お肉が好きな犬や猫はとても多いです。しかし、好みが肉だけに偏ってしまうといざという時に食事の変更ができず寿命に影響を及ぼしかねません。

     

    オイル(オリーブオイル、アマニ油など)

    オイル(オリーブオイル、アマニ油など)
    (DUSAN ZIDAR/shutterstock)

    油は、1g当たりのカロリーがタンパク質や炭水化物よりも高く、少量でも高カロリーになってしまう危険性があります。

    油を添加する際は、「ひとまわし」や「少々」といった感覚論ではなく、必ず主食として食べている食事の油の量を確認してからにしましょう。

    AAFCOや総合栄養食の基準には脂質上限が設定されていないため、市販のAAFCOや総合栄養食の中には、もともと高脂肪の製品があります。

    一般的なフードは、乾物当たり(水分を抜いた状態)で10%~30%前後までのものが多く、それを超えるフードは、油がかなり多いフードだという認識が必要です。

    オイルの過剰摂取が引き起こす問題

    オイルの過剰摂取は、肥満になるだけでなく、嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす可能性があります。犬の場合では、急性膵炎を引き起こすこともあります。

    膵炎は、時に命かかわる状況になることもあるため、意図せずに膵炎を引き起こすことがないようにしなければなりません。

    新しい製品は安全性に注意

    トッピングとして、オリーブオイル、アマニ油などを追加するケースは多いです。また近年サーモンオイルやインカインチオイル(サチャインチオイル、グリーンナッツオイル)などさまざまな新しいオイルが販売されています。

    しかし中には、安全性が確認されていないものもあるため、新しいものには注意が必要です。

    トッピングをする際は、栄養バランスを崩さないようにしよう

    トッピングをする際は、栄養バランスを崩さないようにしよう
    (Valeri Vatel/shutterstock)

    トッピングによってフードをより好んで食べてくれるようになる一方で、栄養価が計算され配合されている総合栄養食やAAFCOのフードへトッピングすることで、全体のバランスを乱すリスクがあることは、知っておきましょう。

    トッピングの量は控えめにし、ローテーションによってリスクをさげつつ、食の楽しみを増やしていくことをおすすめします。

    栄養学はバランスが最も大切です。食材の特性を知り、安全にトッピングをしたいですね。

    次回連載

    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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