DC one dish獣医師/ペット栄養管理士の岩切裕布です。犬や猫のドライフードにトッピングをする際、皆さんはどのような食材を選びますか。食材の種類や量によっては、全体の栄養バランスを乱してしまうこともあります。前回に続き、知っておきたい食材の知識、トッピングする際に気を付けることをお話します。
前回の記事:【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~煮干し・海藻・青魚編~vol.11
もくじ
トッピングには、味を変えることで食欲を増し、食のバリエーションを増やすことで動物たちの生活の質を高めることができるといったメリットがあります。
また、トッピングするものによっては、効率よく水分摂取ができたり、体に良い成分を摂取できたりするので、健康にもプラスに働くことがあります。
日々の主食として与えるご飯は、総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものを与えることが基本です。そして、トッピングはおやつも含め1日に必要なカロリーの10%程度までにおさえましょう。
もし、トッピングが10%を超えてしまっている場合は、量を減らすか、トッピング自体を総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものに変更すれば、割合に関係なく与えられます。
しかし、一般的な上記のルールを守ったとしても、長期的に同じ食材をトッピングすることで栄養素の欠乏や過剰を示す可能性がある食材があります。注意が必要な食材を挙げてみましょう。
サケはドライフードの原料にもよく使われ、犬や猫にも人気の食材のひとつです。しかし、サケにはビタミンDが大量に含まれています。
総合栄養食やAAFCOの基準には、ビタミンDの摂取上限が設定されています。鮭の摂りすぎは、ビタミンDの過剰症につながる可能性があるため注意しましょう。
市販ドックフードでも、たんぱく質をサーモン単体で設計してあるフードはほとんどありません。
他のたんぱく質も合わせて使用しているか、サーモンから油を抽出したミールの状態で配合されていることが多いです(ビタミンDは油に溶ける脂溶性ビタミンのため、油を除くことでビタミンDの量を減らすことができます)。
ビタミンDはカルシウムやリンの代謝に関わっており、過不足なく摂取することが重要です。
人のサプリメントでは、カルシウムと相乗効果を期待して添加してある製品が多く、油に溶ける性質からEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの油が含まれるサプリメントにも含まれている場合があるため、注意が必要です。
人も動物も、ビタミンDの過剰摂取は、体にミネラルを沈着させ、高カルシウム血症、沈うつ、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。
レバーも犬や猫に人気の食材です。ビタミンAは眼や皮膚を健康に保つために必要な栄養素で、特に、鶏や豚のレバーに多く入っており、鮭と同様に、ビタミンAにも摂取上限があります。
そのため、市販フードでもタンパク源をレバー単体で設計してあるフードは、見ることがまずありません。
ビタミンAを過剰に摂取すると、食欲不振、体重減少、関節炎などの症状を引き起こします。
飼い主さんがレバーを茹でてトッピングしたり、総合栄養食やAAFCOの基準に沿っていないレバーをメインにしたりする場合は、多く与えすぎないようにしましょう。
鶏のささみは、水分を除くとほぼタンパク質です。そのため、トッピングとして許容されるカロリーである1日の摂取カロリーの10%をすべて鶏ささみにしてしまうと、相対的に摂取するタンパク質の割合が大きくなってしまいます。
特に病気がなく健康な状態の場合は、鶏ささみの摂取が大きな問題になることはまずありません。しかし、腎臓病などのタンパク摂取の制限が必要な病気を持つ犬や猫に、鶏ささみを多く与えるのは控えましょう。
血液検査上の腎臓の数値を上昇させ、尿毒症になり、食欲の低下や嘔吐、下痢などの引き起こす可能性があります。
タンパク質が多くある程度量を与える可能性のある食材としてはほかに、ジャーキー、卵白、ヒレ肉、むね肉などがあります。愛犬や愛猫が好きだからといってトッピングをタンパク質の多いものだけにするのは、避けましょう。
お肉が好きな犬や猫はとても多いです。しかし、好みが肉だけに偏ってしまうといざという時に食事の変更ができず寿命に影響を及ぼしかねません。
油は、1g当たりのカロリーがタンパク質や炭水化物よりも高く、少量でも高カロリーになってしまう危険性があります。
油を添加する際は、「ひとまわし」や「少々」といった感覚論ではなく、必ず主食として食べている食事の油の量を確認してからにしましょう。
AAFCOや総合栄養食の基準には脂質上限が設定されていないため、市販のAAFCOや総合栄養食の中には、もともと高脂肪の製品があります。
一般的なフードは、乾物当たり(水分を抜いた状態)で10%~30%前後までのものが多く、それを超えるフードは、油がかなり多いフードだという認識が必要です。
オイルの過剰摂取は、肥満になるだけでなく、嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす可能性があります。犬の場合では、急性膵炎を引き起こすこともあります。
膵炎は、時に命かかわる状況になることもあるため、意図せずに膵炎を引き起こすことがないようにしなければなりません。
トッピングとして、オリーブオイル、アマニ油などを追加するケースは多いです。また近年サーモンオイルやインカインチオイル(サチャインチオイル、グリーンナッツオイル)などさまざまな新しいオイルが販売されています。
しかし中には、安全性が確認されていないものもあるため、新しいものには注意が必要です。
トッピングによってフードをより好んで食べてくれるようになる一方で、栄養価が計算され配合されている総合栄養食やAAFCOのフードへトッピングすることで、全体のバランスを乱すリスクがあることは、知っておきましょう。
トッピングの量は控えめにし、ローテーションによってリスクをさげつつ、食の楽しみを増やしていくことをおすすめします。
栄養学はバランスが最も大切です。食材の特性を知り、安全にトッピングをしたいですね。